国際結婚で一番難しいのは言語の壁だと思いますが、時にはその言葉の壁が、良い方に作用することもあります。そう私が実感するのは、まだ新婚の頃、韓国に嫁いで間もない頃に何度となく起きた夫婦の危機を、言葉の壁のおかげで乗り越えられたからです。

新婚当時私たち夫婦はよく喧嘩をしました。同居している舅が、二日に一回アパート団地の警備のお仕事に出られるので、舅が家にいらっしゃる時には夫も私も無意識のうちに自制心が働くのか喧嘩などせず穏便に、普通に過ごせるのですが、舅が出勤して留守になる日には些細なことでよくぶつかっていました。

理由は本当に下らないことで、私が怒るときはお酒を飲んだとか、言葉遣いが気に食わないとか、家事を手伝ってくれないといった内容が主で、夫が怒るときには部屋が散らかっているとか、私が何か不満そうな顔をしているとか、そういった内容が主だったと思います。

当時の日記を見ると、コーヒーをいれてくれると約束したのにいつまでたっても夫がいれてくれず、じりじりしてきた私が遂に爆発し、私が突っかかってくるから夫も意地になって動かず、結局喧嘩になった、そんなエピソードもありました。

当初は二日に一回喧嘩していた私たちが、次第に毎日喧嘩をするようになりました。毎日喧嘩をする日々が一週間弱続き、その後また二日に一回のペースに戻り、そのうち喧嘩の回数は一月に一回、一年後には数ヶ月に一回に激減し、結婚7年になる今は、全く喧嘩をしないようになりました。

私は人とぶつかることが嫌いな性格です。基本的に全て相手に合わせるので、喧嘩をしたことがありません。無意識のうちに体がそう動いているので、特にストレスもありませんが、自分が本当にしたいこと、自分が本当に好きなことというのが分からずに生きてきました。

そんな私が結婚して夫と一緒に暮らし始めて、毎日のようにイライラするし、毎日のように喧嘩をするし、毎日のように泣いていました。私は自分の中にこんなにも怒りの感情が湧くものなんだということを初めて知りました。自分が一生分の怒りを今発散しているのではないかと思ったほどです。

でも幸いなことに、私たちはどんなに喧嘩をしても、それが一日以上長引いたり、事が大きく発展することはありませんでした。なぜなら私の語彙が少ないからです。喧嘩って売り言葉に買い言葉でどんどん発展してしまい、収拾がつかなくなることが多いですけれど、国際結婚の場合は、そもそも言葉が思うように出てこないので、事態がどんどん悪化したり相手を深く傷つけたりすることがありません。また逆に、もしも相手がひどい言葉を投げつけてきたとしても、聞き取れずにスルーすることもあるでしょう。

当時は喧嘩するのに必死で、言葉が不自由なことが逆によかったなんて気づきませんでしたが、今になって、時々テレビに出てくる夫婦喧嘩のシーンを見ると、あんなたいそうな喧嘩は私たち国際カップルにはありえないと思います。

お互いにひどい罵声を浴びせあったりすると、喧嘩が大きくならざるを得ないじゃないですか。でも私が言葉が達者でなかったおかげで、喧嘩はたくさんしたけれどどれも小さく済みました。新婚当時の不安定な時期でしたが、言葉が不自由だったことがうまい具合に作用して大難を小難に抑えることができました。言葉の壁がプラスに働くこともあるんです。

喧嘩って本当に辛いし、心がものすごく痛むし、心身ともにものすごいエネルギーを消耗するけれど、新婚当時のあの喧嘩の日々は、今振り返ると必要なものだったと思います。面白いことに、喧嘩して仲直りするたびに、夫との距離がぐんと近くなるんです。喧嘩を通して「雨降って地固まる」という言葉が本当だったということを身をもって体験しました。

また喧嘩を通して私は、私自身知らなかった自分を再発見することができました。それは一生の宝だと思います。それに何より、喧嘩を重ねながらお互いの考え方の違いを知ることができました。お互いがお互いの違いを知るということは、健全な人間関係を築いていく上で必ず踏むべき段階です。互いの違いを知った上でこそ、相手に歩み寄ったり、あるいは自分と違う相手の考えを尊重することができるからです。

新婚当時、言葉の壁によって守られた私たち夫婦の絆。今ではもう言葉の壁はありませんけれど、これからも美しい言葉、温かい言葉をもっとたくさん学んで、今よりもっと温かく幸せな家庭を築いていきたいです。