外国に行った事もなければ、外国語も話せない私の運命の相手はまさかの外国人。しかも、縁もゆかりもまったくなかった、遠い西洋の国から来た人だったのです。

自己紹介

数年前に日本で出会ったベルギー人の夫と結婚し、現在ベルギーのフランダース地方で夫と共に暮らしている30代前半の主婦「もちか」と申します。

自分でも今の生活が「夢なのではないか?」と思うくらい、元々結婚に興味がありませんでした。

それは自分の両親の離婚劇や、幼少期の辛い思い出からもっていたトラウマに近い思いだったので、自分が結婚して幸せに暮らしているなんて今でも信じらません。

夫の存在はもとより、フランダースの小さなこの町の皆さんや夫の家族にも本当に良くしてもらい、人生で初めて心から幸せだと感じています。

海外は私にとって未知の場所だった

海外には「旅行にいってみたい」くらいの興味は持っていたのですが、めんどくさがりの性格と金銭的な事情もあって実際に行動を移すこともなく、気付けば20代後半になっていました。

会社と自宅アパートの往復をし、休日には部屋に籠ってゲームをしているか、ぼーっとテレビを見ているだけの毎日。ファッションやメイクには興味があったので、外に出ているときは「それなり」だったのですが、家に帰ると途端に電池が切れて、一日中パジャマでダラダラ過ごすという低落。

10代からずっと付き合っていた日本人彼氏と「結婚」を断り続けた事が原因で別れて以来、すっかり一人の心地よさや気楽さを手放すのが怖くなり、異性と出会う機会すら避けるようになっていたというのもありました。

20代半ばを過ぎ、恋愛に強く付きまとうようになった「結婚」の二文字。トラウマでもあるこの二文字が私を恋愛から遠ざけて行きました。

そんな私の転機は、ネットの求人サイトを見ている時に訪れました。「急募」と出ていたその求人は紹介予定派遣でしたが、とても条件がよく、なにより私がもっていた資格が優位だった事ですごく気になったのです。

気付いたら応募ボタンを押していましたが、応募してから「英語が話せる方」の条件を見つけ少し後悔しましたが、時すでに遅し。

好条件のわりに応募者が少なかったのか、すぐ翌日には連絡が来て面接をする事になりました。

夫との出会い

その時まだ務めていた会社の有給を初めて使って面接へ。応募した会社はデートスポットで有名なオシャレなベイエリアのビルにあり、オフィスはまるで外国映画でみるような雰囲気。ちょっと見ただけでも数人の外国人の姿が見え、「英語が話せる方」の条件を思い出して緊張で手が汗まみれになりました。

受付の女性に案内された面接室は誰かの個室といった感じで、小さな部屋に電話とパソコンが置かれたデスク、その前に椅子が2脚あり、そこに座るよう促されました。

受付の女性から飲み物を聞かれ、「コーヒーでお願いします」と答えると女性は部屋から出て行き部屋に一人きりに。テーブルの上のメモに汚い字で日本語と英語のメッセージが書かれているのが見え、面接官は外国人なのだと思い「英語が話せないから終わった」という諦めと絶望感でいっぱいになりました。

そして、しばらくして部屋に入って来たのが、その後結婚する事になるトーマスだったのです。

職権乱用?

コーヒーを持って入ってきたのは薄い栗色の髪に、綺麗な緑の瞳をした少し太めの外国人男性。頭の中で一生懸命中学英語の復習をしながら、第一声の言葉を必死に考えていましたが……。

「はじめまして。トーマスです」と、なんとも流暢な日本語の挨拶が聞こえてくるではないですか。しかし、緊張でいっぱいいっぱいになっていた私は「は、はじめまして。日本語お上手ですね」などと、面接官に対して相応しくない返答をしてしまったのです。

無礼ともいえる私の返答に対してトーマスは笑いながら「緊張しなくて大丈夫ですよ。コーヒー暖かいうちにどうぞ」と、優しくフォローしてくれました。その後、彼の日本人上司(入社してから日本法人の代表取締役だと知った)も合流し、面接が始まりました。

コーヒーと緊張のせいで途中でトイレに行くという失態までしたのに、なんと結果は「採用」。理由は今でもトーマスに尋ねると「さあね」と言ってはぐらかされています。

面接から数日後、採用通知のメールを見た時にはとても驚きました。しかし、とにかくその時勤めていた会社よりも、数倍待遇の良い会社に転職出来ることがきまったのです。その日のうちに退職願いを出し、トーマスの会社での勤務開始は1ヶ月後に決まりました。

「それまでの間、少しでも英語が話せるように頑張ります」と返信すると、それはトーマスに直通のメールだったようで「僕が教えてあげるからいつでもメール下さいね」と。なんて優しい人なんだろうと、その時は単純に自分の未来に差し込んだ光(好条件の会社、優しい上司)に感謝していました。

はじめは疑っていた

勤務開始の前週、トーマスからメールが来ました。優しさに感謝しつつも、さすがに上司になる人に気軽にメールできるわけもなく、私からはまったくメールはしていなかったのでなんだか気まずく、開かないまま1日置いてしまったのです。

次の日に開けたメールには「明日は金曜だから、どこかで食事しませんか?英語の授業しましょう。笑う(原文まま)」と書いてあり、メールを開かなかった事を後悔しました。上司からのお誘いに当日までなんの連絡もなしとは……「嫌われたに違いない」と。

謝罪と「今日の今日になってしまったのでまた機会があればよろしくお願い致します」という内容を送ると、すぐに返信がきました。彼から来た返信は「今日予定ありますか」。

何も予定はなかったので、そう書いて送ると「よかった。実はもうレストラン予約してました。笑う(原文まま)」という返答が来て驚きましたが、同時に「日本に来ている外国人は遊び人」というイメージがあったので「きっと私がダメだったら他の日本人の女の子と行くつもりだったんだな」とも思っていました。更に出会ったばかりな上に、職権乱用とも思えるような方法で食事に誘われた事に対して不信感も抱いていました。

それでも「断る」という事が頭に浮かばなかったのは、上司であるトーマスの誘いを断れば最悪内定を取り消されてしまうかもしれないと思ってたからです。しかし、面接でのトーマスの紳士的な振る舞いや、今までに経験した事のない、積極的すぎるとも思えるようなアプローチでトーマスに対して興味を惹かれていたのも理由の1つでした。

ベルギー人の面接官が私の結婚相手なの?(もちか)さんの体験談②