ベルギー生活は夢の「庭付き戸建て」で始まった

ベルギーに着くと、空港からトーマスの家まで会社が手配してくれていたタクシーで向かいました。トーマスの家はすでに賃貸人の引っ越しが済んでおり、家具は元々あったものがそのままだったので、すぐに住める状態だったのです。ベルギーでは家具付きのまま貸すのが普通なんだそうです。

レンガ造りのまるで絵本に出てくるようなかわいい家に自分が住めるなんて。しかも、もう一軒家が建ちそうなくらいの広い庭まであります。庭にはこの家を最初に立てた方が植えたという、立派な桜の木がありました。私達が引っ越したのは秋だったので残念ながら咲いていませんでしたが、しっかりと根を張り枝を広げた桜は、春には素敵な花を咲かせる事だとろうと胸が躍りました。

築90年になる家でしたが、すでにトーマスが購入時にリフォームしていたので家電は最新の物が入っていました。ただ一つ日本が恋しくなったのはウォシュレットの存在ですが、ベルギーの私達の住む地域では水のカルキ(石灰)の問題もあり、あまり簡単に取り付けられるような雰囲気ではなさそうでした。

その日の夜は近所のFrituur(フリトゥール)ショップでテイクアウトのポテトフライを買ってきて済ませました。日本では特別ポテトフライを美味しいと感じたことはありませんでしたが、ベルギーのポテトフライは時々無性に食べたくなる程おいしいと感じます。

「人生の長期休暇」を得て

老人に対して「何をしてるの?」と聞いた時に「pensioen(ペンション=年金)」と返って来る事が多いでのですが、私の暮らしている地域ではこれには「年金生活」のほかに「人生の長期休暇」という意味合いもあります。「私の暮らしている地域では」と前置きしたのは、フランダース地方の言葉であるオランダ語の訛りの1つ「フラマン語」ですが町が変わると訛りもかなり変わったりするのです。

例えば「アントワープ」と「ゲント」でも全然違いますし、「ブリュッセル」に至ってはトーマスやトーマスの家族いわく「殆どフランス語」らしいです。(ちょっと皮肉も交じっていますが)

トーマスやトーマスの祖父母は冗談めかして「もちかもpensioenの仲間入りをしたね」とよく言います。だから「老人的」なアクティビティを楽しまないと、と言ってトーマスの祖父母はよく「pensioen会」に連れて行ってくれたりします。

トーマスの祖父母はカナダに駐在していたことがあるので英語が堪能ですが、多くの老人はそうでもありません。しかし、皆日本から来た私の事をとても歓迎してくれて、日本の話を聞きたがります。中にはバブル期に日本旅行を経験した方も居て、そういう方はなぜか特に日本に対して好印象をもっているのが不思議でした。私はバブル後に生まれたので関係ないのですが……。

「庭付き戸建てで庭いじりをしながら暮らす」夢はかなったものの、「バリバリ働く」夢はまだ実現できていませんでした。

しかし、大学卒業後就職に苦労したこともあり、ブラック企業勤めが長かった私は初めて心から「休んでいる」と感じたのです。

トーマスと同じ会社に入る前は朝早くラッシュの電車に揺られて出勤し、帰宅は終電という事が殆どでしたので、休日も「休んでいる」という感覚はあまりありませんでした。ダラダラしていても頭の中では「月曜からの仕事」でいっぱいだったからです。

現在の生活

現在はオランダ語教室に通っているので「pensioen」ではなくなりましたが、とても充実しています。最初はベルギー人の「家に人を招く文化」に疲弊した時期もありましたが、言葉の壁が減ってくると同時に、「人を招く事」へのストレスがなくなっていきました。

ベルギーでの「人を気軽に家に招く文化」は元々日本では1人暮らしが長く、気心知れた友人以外を「聖域」であった自宅に招いた経験がなかった私は最初はとても苦労しました。

招かなくてもベルギー人は気軽に家に訪ねてくるので、いつでも気が抜けません。最初は日本での悪習から1日中寝間着で家に居る事もありましたが、今では朝起きてトーマスを送り出した後「部屋の中用のよそ着」に着替えています。

訪ねてくるだけではなく、「お茶を飲んでいく」事も少なくないので、コーヒーサーバーも購入し、BRITAを買って緑茶用の水を常備するようにもなりました。「日本人の奥さんがいる家」なので本場の「Greentea」を期待される事が多いのです。

食文化も違うので苦労する事はありますが、周りの人は「新しい文化」にとても興味をもってくれて、パーティーの際に「日本食」を出すととても喜んでくれます。最初は生魚を食べるのを怖がっていたご婦人が、今じゃ自宅でも食べるようになったというような、嬉しい出来事もありました。

国際結婚をしてみて思った事

私達はまだ出会って数年、結婚してからもまだ数年ですので、これからいろいろな困難があるかもしれません。しかし、私は「文化の違いは性格の違いのようなもの」で「愛があれば乗り切れるもの」だという確信があります。元々結婚に対して理想や期待もしていなかったせいもあるとは思いますが、これまで「国際結婚」をして失望したことは全くありませんでした。

日本人同士で結婚しても上手くいかない人は上手く行きません。私の両親のように。人種や文化の違いに限らず「結婚」するにあたって一番大事なのはお互いに「尊敬」し合える事、相手を「思ったり」「認める」気持ちがなによりも重要なのだと思います。

私達の場合トーマスの日本語力が高く、意思疎通に「言葉の壁」が無かったことも大きいです。しかし、これも「大事な事は英語の文章で伝える」などの努力を私もしていました。英語を話すことはできませんでしたが、落ち着いて時間をかけて辞書を見ながら書いた文章は、日本語で伝えるよりもトーマスに理解してもらえたのです。

これもトーマス、私の双方に「相手の気持ちを知りたい」という想いがあったからなのだと思いました。(私の英語力は決して褒められたものではないので)

私たちの国際結婚の生活はまだまだ始まったばかりですが、お互いに思いやりと尊敬の気持ちを忘れずに、これからも幸せにベルギーで過ごしていくつもりです。

ベルギー人の面接官が私の結婚相手なの?(もちか)さんの体験談①