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結婚生活の始まり

中国 国際結婚 体験談

 

無事に結婚ビザも取得し、王くんと私の結婚生活が始まりました。婚姻届は、特に日付に拘ることなくサラッと提出し、結婚式、新婚旅行はなし。都内の中国人が多く住むとある街にアパートを借りて、結婚生活がスタートしました。

当時私は22歳、王くんは24歳でした。私も王くんも誰かと同棲をするのは初めての事でしたし、右も左も分からずに結婚生活をスタートさせてしまいました。2人の関係に関しても、お付き合いをしている頃のようにデートの時だけ会うのと、一緒に暮らし始めるのでは雲泥の差がありましたし、私はまだその頃中国語が出来なかったので、王くんのたどたどしい日本語でのコミュニケーションは決してスムーズではありませんでした。

王くんと暮らして感じた文化の差には、こんなものがありました。

一緒に食事をしていると、王くんが自分のお箸でおかずを取り「いる?」と聞くことなく無言で私のお皿にボンボン入れる。

日本人の感覚としては、一度口を付けたお箸で、おかずに箸をつけて人に渡すということは、最初は抵抗のあるお箸の使い方でした。日本人的には、やったとしても大人が自分の子供に対してかな?という感覚ですが、王くんは「いっぱい食べて、これも、あれも食べて」と、どんどんおかずを入れてきました。

王くんに「なんで?」と聞いたところ「りりちゃんこそなんで?俺たち夫婦じゃん…」とショックを受けていました。笑

何年か後、中国人が実際に、またはテレビの中で同じことをしているのを何度も目撃しました。中国人にとってはかなり普通のことみたいです。

 

私が王くんに「ありがとう」と言うと王くんは悲しい気持ちになる

中国 国際結婚 体験談

 

これは私が「なるほど」と思った文化の違いの1つです。日本人は家族同士であっても「ありがとう」を言うことが礼儀だとされますよね。親しき仲にも礼儀あり、という考え方です。でも中国人は真逆で、夫婦、家族なんだから、優しくしてあげて当たり前、あれこれやってあげて当たり前、なので「ありがとう」と言われると他人行儀のようで突き放された感じがして悲しいそうです。

また、中国人は同じように親しい間柄では「ごめんね」もあまり言いません。これも同じような理由で、家族、夫婦なら相手の過ちを許し合うのが当たり前だからです。小さなことで「ごめんね」と言われると「ごめんね」を口にする程大きな過ちなのか…もう自分を親しい人として信頼していないのか…と悲しくなるそうです。

 

王くんは基本的に毎日中国の家族と電話をする。でもこれは当たり前のこと。

中国 国際結婚 体験談

 

王くんの場合、毎日国際電話をするお金がなかったので、中国の家族からの着信履歴を見ると、王くんもあちらに電話をして話す事なく切る、ということを繰り返していました。もちろん話が出来れば1番ですが、お互いに着信履歴を確認できることで相手が無事であることは確認できます。または、QQ(中国でメジャーなSNS)で中国の家族が住む村の若者にメッセージを送り、それを家族に伝えてもらう、という方法でコミュニケーションを取っていました。

ある時は村の若者から「おまえの母ちゃんが電話して、って言ってるよ」とメッセージが届き急いでお母さんに電話をしていたこともありました。(余談ですが、毎日毎日そんなに話すこともなく毎回「ちゃんとご飯食べて、身体には気を付けて」と同じ事を言われる、と言っていました。日本も中国も子を思う親の気持ちは同じなのですね)

王くんの場合、お父さんもお母さんも7人兄弟。親戚は推定100名。(多過ぎて王くん自身も把握していない)特に仲の良いいとことはとこが20名ほどおり、彼らとは2週間に1回ぐらい電話をしていました。(王くんがお金がないのを知っているので、あちらからかけてくれるのです)

中国人は、とにかく家族•親戚の絆が強いです。何年も会っていなくても小さい頃に撮った思い出の写真をパソコンに落として王くんに送って来てくれるいとこもいました。そして「懐かしいよね(いとこ)」「うん、なつかしい〜(王くん)」「阿勇(王くんの弟)小さくて可愛いね。笑。(いとこ)」…のようなやり取りを細々としているのです。

私はいとこやはとこなどと、そんなに頻繁にやり取りをすることがなかったので、最初はとても驚きました。しかし、なぜ王くんが自信に満ちていて、人生辛く悲しい事もあるものの、生きることに安心しきっているように見える理由が分かった気がしました。

もちろん全ての人に当てはまる訳ではありませんが、中国では、どんな困難に陥ったとしても誰かが必ず手を差し伸べてくれるのです。全てを助けてくれなくても、部分的にでも助けようと手を差し伸べてくれるのです。決して1人になることなどないのです。「社会」で仲間外れにされようが罵倒されようが、絶対的に味方になってくれる家族がいるのです。

王くんはしばしば「日本人は何だな冷たいだね…」と言っていましたが、なんとなく理解出来てしまう私がいます。

 

王くんの金銭感覚

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これに関しては個人差があるかも知れませんが、私が王くんと結婚して驚いたのが、王くんと私の金銭感覚の違いです。

私の両親は共に公務員で、両親のそれぞれの実家も農業と不動産業を営んでいました。つまり、金銭的には比較的恵まれた環境で育ったのです。借金は絶対にしないようにしないといけない、友達からお金を借りるようなことがあれば、それは友情の終わり…そんな価値観で育てられて来たのです。

しかし王くんは真逆の価値観を持っていました。王くんだけに限らず中国人はかなり気軽に友達同士お金の貸し借りをします。それが原因で友情が壊れることなど殆どありません。お金のことも含めて、友達同士が助け合うのは彼らにとってごく当たり前のことなのです。

新婚の頃こんなことがありました。中国のお正月が近づいて来た頃、王くんのお父さんから「もし余裕があるなら、ほんの少しで良いのでお金を送って欲しい」という打診がありました。王くんの中国の家族は決して裕福ではないのですが、お金の打診をされたのはこの1回だけでした。親戚に配るお金、お正月の準備、裕福であるか否かに関わらずかなりの出費を要するのです。

王くんはお父さんにお金を頼まれた事など初めてだし、出来る事なら10万円くらい送ってあげたい…と言いました。しかし私たち夫婦にそんな余裕などありません。まだ新婚の頃で、あまり中国人の価値観を理解出来ていなかった私は、激怒して絶対に反対だと言いました。

そもそも送るお金がないし、その為に借金をしてお金を送るなど絶対にあり得ないと思ったのです。

しかし王くんは家族に送るお金を友達に借りると言いだしたのです。私がいくら反対しても全く聞いてもらえませんでした。だんだん私は、借金をすることよりも王くんが私の意見を聞き入れずに中国の家族の意見を聞き入れていることに腹が立って来て「私より中国の家族の方が大事なんでしょう」と王くんの前でびーびー泣いていたのです。

同じ地元出身の友達の黄くんに、10万円を貸してくれるように頼んだ王くん。実は黄くんもその時全くお金がありませんでした。さらに黄くんは奥さんと小さい子供がおり、王くんにお金を貸すことなど不可能でした。しかし、そこで黄くんが取った行動は、王くんの頼みを断るというものではありませんでした。

なんと黄くんは自ら別の友達からお金を借りて、そのお金を王くんに貸してくれたのです。さらに黄くんは王くんに「返すのはいつでも良いよ、返せる時で。10年後とかでも良いんだよ」と優しい言葉までかけてくれたのです。

こんなことがあるのか、と日本人の私はびっくり仰天でしたが、王くん的にはこれは普通のことだそうです。その証拠に、後日王くんも借金をして友達にお金を貸してあげていました。もちろん、すぐに返せなどということは言いません。

「なんでそんなことするの?」と信じられない気持ちで尋ねた私に返って来た言葉は「友達だから」というシンプルなもの。

金の切れ目は縁の切れ目、割り勘は一円単位で、という日本の文化で育った私にとっては大きなカルチャーショックでした。中国人にとって、友情があれば金の切れ目は縁の切れ目ではないのです。それで友達が助かるなら、嬉しいとさえ思っているのです。

様々なカルチャーショックに出会いながら、王くんとの結婚生活は続いていきました。喧嘩の原因はやはりお金のことが多かったです。友達にお金を貸すと言う王くんと、貸すのは良いがこれでは自分たちのご飯が食べれない!と主張する私は、何度も何度もぶつかり合いました。

しかしそれと同時に私たち夫婦は本当に多くの王くんの友達の中国人に助けてもらいました。私は日本人なのに、その中国人の暖かい助け合いの輪の中に入れたようでとても嬉しかったです。

王くんの結婚生活の中で小さい頃からの中国人のイメージは、見るも無残にガラガラと崩れていったのでした。

 

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